2018/03/04

バラ栽培計画(2021改訂版)

【購入前の注意】
 バラ栽培初心者は後先考えずに衝動買いしてしまうことが多いようです。買う前に考えるべきだったな、と思うことをまとめました。


1 環境
・最終的に10号まで育った鉢を置く場所があるか・地植えの場合、育った時のことを考えてスペースを取れるか
・1年中日あたりはいいか(冬は日ざしが斜めに入るが、夏はほぼ真上になるので北・南向きベランダは絶望的)日あたりがわるいとうどんこ病の根絶は厳しく、狭いベランダで室外機の風があたりやすいとハダニの被害は避けられない(風に乗って飛ぶので、付近の植物も全て被害にあう)
・戸建ての場合は鉢植えにコンクリートなどの照り返し対策はできるか(土でない場合、鉢台やポットフット・すのこ・ウッドデッキなどがないと厳しい)
・土作業できるスペースがあるか・土や剪定枝をどうやって処分するか(つるバラはトゲだらけのごんぶとのシュートがばんばん出るので、積極的に処分できないと厳しい)
・ガーデニング用品(用具や薬剤・土・肥料など)の置き場所はあるか、避難経路を塞いでいないか(マンションなどはベランダが共有部分なので塞ぐのは禁止)
・散水栓がない場合、対応できる数か(ジョウロは時間がかかる)、水やりした場合鉢底から抜ける水がベランダを汚す可能性を考えているか(土が排水溝につまる)

2 レイアウト
・色の組み合わせ・クレマチスなども含め開花時期が合うか(早咲き・遅咲き)、一季咲きか四季咲きか
・地植えの場合、1株でいいのか(素人は種類を買いがちだが、バラ園は見栄え重視で2~3株植えにしている)

3 用途
・枝が固く誘引しづらい(オベリスクに巻けない)、花首が長すぎる(高いところで咲いてしまう)、花もちが悪い、樹形がわるい(ぐちゃぐちゃに咲いてしまう)、トゲが多い、巨大化する、バッサリ散るなど特徴はさまざま
 花首が長いバラは花束に、掃除しにくい場所には花弁が散りにくいバラ、という工夫が必要


 バラを栽培したいというのはマメな方が多いと思いますが、肥料・花がら処理・剪定処理・害虫駆除・鉢増しや植え替えなどコンスタントに作業があります。手入れできない数を買わないようにしましょう。また、一つ一つの花容が素敵なバラでも、庭造りのバランスで考えると見劣りするバラというのは多いです。バラ園での開花の様子や殿堂入りのバラについてよくよく吟味して購入することをおすすめします。


【備品】
液体肥料:ハイポネックス原液(6-10-5)または
     花工場(5-10-5) リン酸重視
     ハイグレード開花促進(0-6-4)もおすすめ
活力剤+補助:リキダス
       ハイフレッシュ
       メネデール
害虫対策:①アタックワンAL・スミチオン+ダイン と
     ②ベニカXガード のローテーション
培養土類:①バラの家オーガニック培養土+ベラボンM
     ②¥1000以上の培養土+荒目の川砂
      2つのいずれか
ポット:スリット5号~8号または素焼き鉢

裸苗・大苗・新苗・中苗など、苗の種類についてはこちらをご覧ください。


【栽培計画の例/暖地】
1月 風注意 元肥(植え付け時のみ)
 裸苗はすぐに植え付ける。購入した大苗が届いても、よほど問題がない限り剪定はしない(寒風で芽が枯れ込んだ時の保険として下の芽を残しておきたい)。施肥もしない。腐葉土はおすすめ。切り口に念のためトップジンなど癒合剤を塗っておくとよい。

 地植えは植え付け時のみ2日ほど水をしっかりやる。どれくらい水を与えたかわかるようにバケツ推奨(シャワーだと500mlくらいしかやれていないことに気づかない人が多い。バケツ2杯くらいは必要)。それ以降は1ヶ月以上雨が降らなかった場合は与える。

 鉢植えの水やりは7~10日に1回程度。鉢皿を用いている場合は底から少量出ただけで水をやった気になりやすいので注意。最低でも鉢皿になみなみ1杯の水を捨てるくらい与える。ただしDA社の土はかなり水保ちがいいので2週間以上水やりが不要の可能性がある。この場合、鉢を持ち上げて軽くなっているかどうか確かめる方法がよい。
 水は午前中に与える(夕方与えると鉢内の水が凍結する)。冬場は強風や湿度の関係で乾燥しやすく、芽も傷みやすいので日光を遮らない不織布をかけておくのがおすすめ。根の活着のため乾かし気味にすると根の活着自体はいいが、芽に必要な水の吸い上げが不足しがちなので芽の乾燥には気をつける。



2月 風注意 元肥(有機肥料)
 1月と同様に管理する。とにかくよく陽に当てる。
 下旬になったら剪定する。枯れ込んだ枝や樹形の悪い部分を整理して癒合剤を塗る。関東以西は下旬に施肥(芽出し)。この時期の施肥が花つきに影響する。

3月 置肥 液肥
 冷え込みや強風がおさまり、日照により葉が展開している場合は不織布を取る。中旬までには必ず取る(芽が引っかかって取れてしまう)。
 固形の施肥だけでなく液肥も補助的に与える。展開した葉を殺虫消毒する。4月になるとアブラムシなどもつきはじめるので下旬にはオルトラン・ダイアジノン・ベニカXガードなどをまく。
 この時期は前月より水やり頻度を上げる。展開した葉の分蒸散が増えるので水不足になる。また、鉢内の肥料濃度が上がらないように水不足には気をつける(根が傷む)。

4月 殺虫剤(粒剤) 置肥 液肥
 水やり頻度が一気にあがるが、温度上昇や強風も続くので注意する。急に晴天になった日は葉水(ニーム水や活力剤水がおすすめ、場合によっては液肥の葉面散布でもいい)をする。急な強風は室内に取り込むか風よけする。葉面散布はしすぎると葉が肥大化する。
 画像は真夏の地植え直射対策だが、もう少し下まで覆うと台風や強風対策にもなる。支柱は4本を上で束ねたもの。

 

 この時期鉢植えの水やりは増えるが、意外に雨天も多い(日照が悪い)ので水を与えすぎると徒長する。天気予報に注意して適切な水やりをする。また、急な冷え込みがくるとブラインドしやすい品種もあるので、日当たり・施肥・水やりのバランスを取って株の体力を保っておく必要がある。急な冷え込みは対策ができるのであれば加温していない部屋に取り込むなどするとよい。
 また、新苗でよく見る「摘蕾」については、この時期大苗には行わないこと。3月の芽出し時点で蕾数が確定するので、摘蕾すると蕾がつかないことが多い。意外に日照が悪く温度差もあって切り戻しを行ってもブラインド率が上がる。株の体力が気になる場合は咲きはじめてからカットするのがおすすめ。

5月(新苗販売期) 殺虫剤(スミチオン) 置肥 液肥
 気温があがるので鉢植えは水切れに注意。開花シーズンなので花がらの処理は随時行う。新苗は摘蕾するか、咲いたら早めに切るようにする。日あたりがよすぎると乾燥してハダニがつきやすくなるので鉢植えは水多めか葉水をする。害虫もつきやすくなるのでオルトランなど粒剤を撒き、蕾に殺虫スプレーをするとよい。風通しの悪い場所は殺菌スプレーをする(大体のスプレー剤は両方の用途をカバーしている)。リンカリ液肥を忘れない(開花シーズンは奇形にならないよう窒素を控える)。
 5月でも天候不順の年が増えてきたので、開花を楽しみたいのであれば雨除け(タープやビニールなど)も検討する。

 鉢植えは水切れが早くなってきたら切り戻しのタイミングで鉢増しする。スリット鉢の場合は鉢皿に水をため気味にすればしのげるが、水が多めだと根の成長がよくないので大きく育てたい場合は水切れしない程度の鉢に替える。根が回った状態でむりやり育てるとその後の生育が悪くなるので必ずする(抜いてみて根が回っていなければ元に戻す)。新苗は抜いてみて根が回っていたら8号~10号にする。
 ただ、天候不順の年は雨ざらしになるので梅雨の終わり近くまで替えないほうがいい。

6月 殺虫剤(粒剤) 置肥 液肥 花がら処理 鉢増し
 開花後は置肥をし、微粉ハイポネックスなど不足要素を補えるものを与える。梅雨時季なのでミリオンやハイフレッシュを与えるのもよい。
 地植えは病害虫が増えるので、薬剤を散布するか泥はね防止でマルチングを検討する。株元に虫を寄せやすい植物・雑草が生えないようにする(虫が媒介する病気は多い)。
 地植えの3本支柱や鉢植えのオベリスクの上部に不織布で雨除けするのも効果的。黒点に弱くない品種はハダニ除けで雨ざらしのほうがいいかもしれない。
 病気が発生した株や剪定枝・花がらは不用意に元気なバラの近くに置かないようにする。

 梅雨明けが近くなったら猛暑に向けて管理しやすい鉢を選ぶ。鉢増しを遅らせて根が回っているものはスリット・素焼きは+2号くらいがよい。水切れしやすくなってきたら鉢皿に水をためておき、水やりのタイミングまでに鉢皿が乾いているバランスがよい。

 水やりは朝が理想かもしれないが、近年のゲリラ豪雨を考えると夕方のほうがいい(夕方降ったら水やりが少なくて済む)。ただし葉が茂っていると降雨があっても鉢の中まで水が浸透していないこともあるので確認はするようにする。

7月 殺虫剤(スミチオン) 置肥 液肥 適宜消毒
 地植えは株元が乾燥しないようにマルチングか盛り土しておく(台木のまま育てたい場合は盛り土をしないほうがよい)。高畝深植えにしておくと自根でよく育つ。癌腫がいやなのでうちは台木を埋めてしまって自根を出させている。分岐部分やシュートが地中から出ていると、カミキリムシの被害でも生き残りやすい。

 コンクリートや金属の上は高温になるので木製のもので照り返しを遮る(すのこ)などして対策する。梅雨明けするとハダニが発生するので、毎日葉裏まで水をかけるようにする(うちでは殺ダニ剤を使用していない。葉水かコーヒー液噴霧で対応)。

 8月が近くなると夏剪定の計画をたてることになるが、個人的には細くて生育の悪い枝を分岐で切るくらいでいいように思う。成長の遅い品種は調子をくずすこともあるので、花を咲かせそうな枝をこまめに切り戻すようにする。成長が早く高さが出て邪魔な品種は強めに切り戻す。

8月 下旬夏剪定 殺虫剤(粒剤)
 夏剪定をする場合はお盆明けから月末にかけて実施。高さを揃えるのではなく、太さを揃えないと咲き揃わないので7月から軽い切り戻しのタイミングで合わせておく。全体を丸く切っても揃わないので、日差しに向けて段になるように(手前を深めにする)切る。

 調子が悪い場合はとにかく殺虫殺菌を徹底する。葉がないと光合成できず、根も成長せず調子は戻らないので、これから出てくる葉をいかに守るかを考える。日ざしが強すぎる場合は支柱と不織布で遮光する(風通しが悪くならないように注意)。

 水やりは基本夕方にたっぷりやる。植物は早朝から光合成するので朝にする場合は6時くらいまで。水切れが早い場合は鉢増しするか、朝夕2回やるようにする。とにかく照り返しが害なので、鉢の温度が上がりやすい場所には置かない。朝から夕方までずっと日があたる場所も避ける(夕方の西陽は光合成の時間帯ではないので負担が大きい)。

 この時期、不調なバラにコガネムシの食害が起こると絶望的なので、オルトランやダイアジノン、ベニカXガードなど粒剤をまくようにする。
 
9月(中苗販売時期) 殺虫剤(スミチオン) 置肥 液肥 適宜消毒
 台風に備えて倒れづらい鉢やレイアウトを考える。隣家との間や車庫など風の被害を避けられる場所、可能なら屋内取り込みの計画を立てる。移動が不可能な場合は支柱やフェンスに枝を固定、上から不織布でくるんでおくのもよい。さらに寄せ鉢にしておくと被害も少ない。鉢植えで多少の枝折れを気にしない場合は、はじめから地面に倒しておく。

 台風後は水やりではない目的として、シャワーで株全体を洗う。台風は塩分を運んでくることも多いので、病気や塩害を防ぐ意味でもやったほうがいい。

 バラの家などでは「中苗」と称する販売があるが、新苗の育ったものが新苗サイズの鉢で送られてくるので、届いたらすぐに鉢増しする。台風や長雨など日照がわるい地域ではこの時期に購入するメリットはないように思う(珍しい品種なら・・・)。セール品は在庫ダブつきの掘り出し物もあるが、生育がわるい・病歴あり・花の発色や形ががわるい・樹形がわるい、香りがない、などの個体差のデメリットを覚悟して買う。販売店は状態のいい苗から出荷しているので、残るのはそれなりの理由があることが多い。

10月 殺虫剤(粒剤)置肥 液肥
 秋の開花への生育期。9月の日照が悪かった場合はブラインド率が高くなる。日照不足を補う商品(ペンタガーデン)などもある。うちではブラインド枝は放置か軽く切り戻している。開花時の作業としては5月と同じ。

11月 置肥 液肥 適宜消毒
 開花が続いているものもあるので、花後の切り戻しをきちんとする。光合成させたいので切りすぎて葉を減らさないようにする。肥料もきちんと与える。

12月
 光合成させておく。寒さで成長が止まったものは肥料を与えないようにする。まだ気温が下がりきっていないので、剪定したり葉をとったりしないようにする。この時期にすると、春を待たずに新芽が出てしまい、エネルギーの無駄遣いになる。

 買った大苗・裸苗が到着してしまった場合はそのまま育てる。裸苗は乾燥してしまうのですぐに植えつける(水をやりすぎない。根が張っていないので晴天でよほど乾燥しない限り1週間に1回くらい)。
 芽が出てきた場合は水やりよりも新芽の乾燥に気をつける。乾燥すると芽が枯れるので、スプレーで葉水でもよいが不織布で風を防ぐのがおすすめ。大苗は届いた時点で茂っている場合があるが(おそらく2年生大苗などすでに細根が張っているもの)、むしったりしないでそのままよく日にあてて育てる。通常の1年生大苗は畑から掘り上げる時に根を切っているので、地上部も短く剪定されている。裸苗とほぼ変わらない状態なので同じように育てる。
 店舗によっては発送を遅らせてくれるところもあるので、可能であれば初心者は2月以降に送ってもらうとよい(正月の帰省も気にしなくてよくなる)。


【参考】
 以前書いた記事を格納してしまったのでこちらに移動しました。考察カテゴリの肥料についてもお役立ていただければと思います。調べるの大変だったので。

兼弥産業株式会社

スリット鉢(CSM)*縁に返しがないタイプ
 CSM-60 外径 6.0 底径 4.5 高さ 5.6      約0.1L 2号
 CSM-75 外径 7.5 底径 5.5 高さ 6.7      約0.2L 2.5号
 CSM-90 外径 9.0 底径 6.0 高さ 7.5      約0.3L 3号
 CSM-105 外径 10.5 底径 7.5 高さ 9.0      約0.5L 3.5号
 CSM-120 外径 12.0 底径 8.0 高さ 10.0   約0.6L 4号
 CSM-135 外径 13.5 底径 9.5 高さ 10.8   約0.9L 4.5号
 CSM-150 外径 15.0 底径 11.0 高さ 12.5 約1.4L 5号
 CSM-180 外径 18.0 底径 14.5 高さ 15.8 約2.5L 6号
 CSM-210 外径 20.5 底径 17.5 高さ 18.6 約4.3L 7号
 CSM-240 外径 24.0 底径 19.5 高さ 21.0 約6.1L 8号
 CSM-270 外径 27.0 底径 22.0 高さ 23.6 約8.8L 9号
 CSM-300 外径 30.0 底径 25.5 高さ 26.5 約12.8L 10号
 CSM-400 外径 40.0 底径 33.5 高さ 33.3 約30.0L 13.3号 
ロングスリット鉢(CSM-L)*縁に返しがないタイプ
 CSM-120L 外径 11.5 底径 8.0 高さ 13.6 約1.3L 4号
 CSM-150L 外径 15.0 底径 11.8 高さ 17.0 約1.9L 5号
 CSM-180L 外径 18.0 底径 13.4 高さ 20.5 約3.5L 6号
 CSM-210L 外径 21.0 底径 16.6 高さ 25.0 約5.1L 7号
 CSM-240L 外径 24.0 底径 18.5 高さ 27.4 約8.6L 8号
スリット鉢(CSC)*縁に返しがあるタイプ
 CSC-30 外径 9.0 底径 6.1 高さ 7.9 320 約0.3L  3号
 CSC-35 外径 10.5 底径 7.0 高さ 9.6 210 約0.5L 3.5号
 CSC-40 外径 12.5 底径 8.5 高さ 10.6 180 約0.8L 4号~
 CSC-45 外径 14.0 底径 10.0 高さ 12.0 150 約1.0L 4号 ~
 CSC-50 外径 15.6 底径 10.5 高さ 13.3 80 約1.4L   5号~
 CSC-60 外径 19.0 底径 13.0 高さ 16.4 50 約2.4L   6号~
 CSC-70 外径 22.0 底径 15.2 高さ 20.0 40 約4.0L   7.5号~
ロングスリット鉢(CSK)*縁に返しがあるタイプ
 CSK-180 外径 18.0 底径 11.5 高さ 20.0 40 約2.3L 6号
 CSK-210 外径 20.7 底径 13.1 高さ 23.0 30 約3.2L 7号
 CSK-240 外径 23.7 底径 16.0 高さ 25.0 25 約5.2L 8号
 CSK-300 外径 31.5 底径 22.0 高さ 32.6 10 約13.0L 10号
 バリエーションがすごいです。ロングスリット8号のあとはただのスリット10号・13.3号しか選択肢はありませんね。

0 件のコメント:

コメントを投稿